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嫡出否認訴訟 無戸籍を生まぬ法制度に(2020年2月12日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 明治の家制度の時代に設けられた民法の規定が、子どもを無戸籍にする深刻な弊害を生んでいる。その現状に最高裁もまた正面から向き合わなかった。

 父親であることを否定する「嫡出否認」の申し立てを夫にしか認めない民法の規定が、法の下の平等や男女の平等を定めた憲法に反するかが争われた裁判である。最高裁が原告の上告を棄却する決定を出し、規定を合憲とした一、二審の判決が確定した。

 原告の女性は30年ほど前、暴力を振るう夫から逃れ、離婚が成立する前に別の男性との間に娘が生まれた。民法の「嫡出推定」で夫の子と見なされることから、出生を届け出なかったという。

 娘は戸籍に記載されず、その子ども2人も無戸籍になった。数年前にようやく戸籍を得ている。妻や子も嫡出否認の申し立てができれば無戸籍は避けられたとして国に賠償を求めていた。

 二審の大阪高裁は、民法の規定に一定の合理性はあり、憲法違反には当たらないとして、原告の訴えを退けた。妻や子に否認権を認めるかどうかは立法の裁量の問題だと述べている。国会、政府にげたを預け、自らは頬かむりをするかのような判決だった。

 戸籍がなく、公的に存在を認知されないことは、当事者に多大な不利益を強いる。住民票もないまま、息をひそめるように暮らす人もいる。個人の尊厳に関わる重大な問題だ。にもかかわらず、最高裁が追認したことを含め、人権の救済を図るべき裁判所がその責務を果たしていない。

 嫡出推定は、離婚前だけでなく離婚後300日以内に生まれた子にも及ぶ。覆すのは容易でなく、生まれた子が無戸籍になる主な原因になってきた。

 法務省が把握している無戸籍の人のおよそ8割が、嫡出推定を避けて出生届を出していない。否認する権利が妻や子に認められれば無戸籍の解消につながる人は多いと、当事者を支援する弁護士らはかねて指摘している。

 政府が長く怠ってきた法の見直しに動いたのは、ここへきてようやくだ。法務省が設けた研究会が昨年、嫡出推定の規定の見直し案をまとめ、法制審議会で議論が始まっている。嫡出否認を妻や子に認めることも含まれる。

 司法の判断はうなずけないが、裁判が問題提起となった意義は大きい。法制審の議論を踏まえ、政府、国会は、戸籍がない人をなくしていくための法制度の改定を滞りなく進めなくてはならない。




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