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相模原事件結審 共生社会を否定する独善(2020年2月20日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 相模原市の知的障害者施設で2016年に入所者ら45人が殺傷された事件の裁判員裁判が横浜地裁で結審した。前回公判で死刑を求刑された植松聖被告は最後まで障害者に対する独善的な考えを改めなかった。

 理解不能な主張を曲げない被告の真意は見えない。遺族や家族の悔しさ、怒り、落胆はいかばかりか。想像するだけで胸が痛む。

 16回に及ぶ公判で際立ったのは、「社会的弱者は不要」という優生思想に通じる差別意識のゆがみ、危うさ、かたくなさだ。

 公判では、被害者参加制度に基づいて遺族や家族らが悲しみや憤り、疑問を被告にぶつけ、時に事件に向き合うよう説いた。

 被告は「突然命を奪って申し訳ない」と言いつつ、重度障害者の存在を認めない発言を繰り返した。19人の命を次々に奪った残虐な行為に「ベストを尽くした」と胸を張る。家族側が「障害者の存在は家族に幸せを与えている」と諭しても、まるで通じない。

 弁護側は、こうした言動は大麻の使用による精神障害だと無罪を主張し、完全な責任能力があったとする検察側と対立した。

 被告は責任能力が争点となった公判が不本意なようで、「責任能力はある」とも発言した。

 公判前に面会した共同通信記者が被告の暗部に触れている。

 劣等感を抱え、人生の意義を求めていた被告は米大統領選の候補者だったトランプ氏をテレビで見た。「世界には不幸な人がたくさんいる」とトランプ氏。施設職員や家族が疲弊していると感じていた被告は、「(利用者を)殺したらいいんじゃないか」と言葉にすると、力がみなぎったという。

 「人生でやるべきことが見つかって、目の前が輝きだした」

 なぜ、こうした「飛躍」が起きたのか。動機の解明や量刑判断に不可欠な考察だ。ところが検察、弁護側とも被告の成育歴を詳細に陳述せず、両親への尋問もない。これでは真相は見えてこない。

 被告は公判で「(事件後は)共生社会の方へ傾いてしまった。(共生は)やっぱり無理、となってほしい」と不満を述べた。ネットには被告の考えに同調するような発言もある。

 優生思想に直結する差別意識の根底に、他者を無価値に貶(おとし)めることで自分を肯定したいという、強くゆがんだ欲求が見て取れる。

 被告の考えとは正反対の共生社会を深化させねばならない。一人一人が内面を省みることで、他者へのまなざしを考えたい。




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Author:gogotamu2019
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