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「安楽死も考えた」PTSDや不眠症…夫が高次脳機能障害に、妻の苦悩(2020年2月24日配信『西日本新聞』)

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高次脳機能障害の夫を支える女性は「障害への世間の関心は薄く、孤独を感じています」と話した

 脳卒中や交通事故などで脳を損傷した人に、記憶力や注意力の低下、感情をコントロールできず怒りっぽくなるなどの後遺症が生じる「高次脳機能障害(高次脳)」について、1月13日付医療面で紹介したところ、読者からさまざまな反響が届いた。家族や当事者の思いを2回に分けて紹介する。

 「もともと明るくて面白い人だったのに…。高次脳になった夫は、キレやすい性格になりました」

 福岡市で暮らす60代女性は切実な思いを寄せた。60代の夫が高次脳となったのは12年前。県外の大学病院で心臓のカテーテル検査を受けた際、脳に血栓が詰まり、脳梗塞を発症したのがきっかけだ。2カ月の入院を経て職場復帰したものの、性格が一変し、ささいなことで声を荒らげるようになった。

 エスカレートしたのは9年前。自室で暴れる夫に「どうしたの」と声を掛けると、頭部を思い切り殴られた。女性が気を失っていた約1時間、夫はただテレビを見ていた。女性は耳が聞こえづらくなり、今も目まいや頭痛に悩み、薬を服用している。

 以後、夫はたびたび手を上げそうになる。女性は夫と2人だけの生活におびえ、心的外傷後ストレス障害(PTSD)や不眠症を発症。「苦しみから逃れたい」と思い詰めるあまり、夫婦でオランダに行き“安楽死”を希望しようと話したこともある。

 夫への周囲の接し方も変わっていった。職場では露骨な嫌がらせや無視をされ、一部の親族も「身内の恥」と遠ざかった。夫に身体障害はないため福祉サービスにはほとんど頼れず、女性は相談できる場がないと感じている。

 記憶障害がある当事者は、悩みや嫌なことも大半は忘れてしまう。一方、共に暮らす家族は心の傷が簡単には癒えない。女性は疲れ切った様子で訴える。

 「長く連れ添った夫の人格が変わったのが一番つらく、結婚生活の記憶をなくしたのが寂しい。世間には家族の苦労をなかなか理解してもらえない。似たような境遇の家族が集まり、気軽に悩みを話し合える場が欲しい」

「悩み、一人で抱え込まないで」九州各地に家族会

日本高次脳機能障害友の会 古謝由美理事長

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 高次脳機能障害(高次脳)の当事者には興奮して大声を出し、怒りっぽくなる症状が見られる人がいる。家族は以前とのギャップに驚き、介護負担も重なってうつ状態に陥りやすくなる。支援団体は当事者だけでなく、家族へのケアの必要性を呼び掛ける。

 NPO法人「日本高次脳機能障害友の会」(名古屋市)の古謝(こじゃ)由美理事長によると、どんな症状が現れるかは、脳の損傷度合いや受傷からどのくらい年月が経過したかによって変化する。受傷直後に症状がなくても、退院して時間がたつうち、ささいなことで激高し、周囲に暴力を振るい始めることもある。

 「意識レベルが回復し、当事者は今まで当たり前にできていたことが、できなくなっていることに気づく。多くの人と接するうちにイライラが募って怒りの感情を抑えられなくなる」と古謝さん。

 家族に「うるさい」などと暴言を吐き、中には刃物を持ち出す事例もある。いらだちをぶつけられる家族は、当事者の変化に戸惑い「自分の接し方が悪かった」と自らを責めがちだ。

 家族の心理的な負担を減らすため、古謝さんは、各地にある家族会やケースワーカー、高次脳の支援拠点機関などへの相談を勧める。「家族同士で話すだけでも『悩んでいるのは自分だけじゃない』と気が楽になり、当事者への接し方に余裕が生まれる。悩みを抱え込み、孤立しないようにしてほしい」

 趣味や友人との食事会など高次脳と無関係の活動で気分転換することも有効だ。古謝さんは「少しでも高次脳のことを忘れる時間をつくるのが大切。家族の介護負担を減らすため、当事者の短期入所を積極的に受け入れてくれる施設の拡充も必要だ」と訴えた。




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Author:gogotamu2019
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