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伴走者と「指先」で会話 盲ろう者、単独でマラソン完走

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伴走ロープを持たずに走る盲ろう者高橋和代さん(左)と、新型点字ツールを開発した伴走者の米山爾さん=2020年2月18日午後2時半、東京都杉並区

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左右計6本の指の動きで、指示や言葉を伝える新しいツール=2020年2月18日午後4時28分、東京都杉並区

 「私はまったく聞こえず、ほぼ見えない二重障害者『盲ろう者』です。先日、マラソン大会に出場し、伴走者の方と、伴走ロープを使わない、大変ユニークな方法で完走することができました」。神奈川県平塚市の高橋和代さん(54)から、こんなメールが届いた。盲ろうの人がどんな方法で、単独で走るのだろう。練習を東京都内で見せてもらった。

 今月18日、高橋さんは1人でJR平塚駅から電車に乗り、都内で通訳介助者の女性と合流。京王井の頭線浜田山駅に降り立った。

 出迎えたのは、「盲ろう者」のスポーツ活動や社会参加を支援する一般社団法人「ハートウエアラボ」(東京都杉並区)代表理事で、高橋さんの伴走者でもある米山爾(ちかし)さん(56)。練習会場の駅近くの公園に着くと、米山さんはバッグから小さな機器を取り出し、高橋さんと自身の指に装着した。

 米山さんが人さし指、中指、薬指の指先に付いたボタンを手のひらに押し付けて信号を送ると、高橋さんはうなずき「OK」と両腕で丸を作った。

 この機器は、走っている最中に、盲ろう者に触れることなく意思疎通できるようにと、工業デザイナーが本業の米山さんが2年前に開発した。名称は「ウエアラブル指点字ツール」。左右6本の指に装着した機器を操作すると、盲ろう者側の同じ指先が振動し「右(左)に」「ブレーキ(止まれ)」などの指示や、「足元注意」「沿道に手を振ろう」などといった短い会話ができる。

 指点字は、盲ろう者のコミュニケーション方法の一つで、伴走者がひらがなの表示法を覚えたり、合図を取り決めたりすれば、盲ろう者は伴走ロープなしで走ることが可能になる。

 高橋さんは、米山さんの指示を受けながら、長さ約400メートル、幅3メートル前後の周回園路を一度も外れることなく何度も走った。緩やかな起伏がある芝生の広場も、気持ちよさそうに踏みしめた。

 「自由に腕を振ることができるので、腕が疲れず、とても走りやすい。気持ちが良かった」。高橋さんは笑顔で通訳者に気持ちを伝えた。

 視覚障害者や盲ろう者が外で走るときは、ロープでつながった伴走者が選手の目となり、安全を確保するのが一般的だ。米山さんは、離れても対話ができるツールを使うことで、盲ろう者が楽しむスポーツをスキーや水泳、球技などに広げる試みを始めている。

 フルマラソンや78キロのウルトラマラソンを完走した経験がある高橋さんが、米山さんとこのツールに出会ったのは2年前。以来、改良と練習を重ね、2人は今年1月の「湘南藤沢市民マラソン」(藤沢市)の10マイル(16キロ)のレース本番でツールを使用。混雑する前半はロープを使い、後半はロープを使わず、ツールを介して米山さんの指示を受けながら「単独」で走った。

 次の目標は3月1日の東京マラソンのはずだったが、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、一般参加枠が中止に。高橋さんは「7年ぶりに当選し張り切っていたので、最初は信じられなかった。でも盲ろう者が伴走ロープなしでも走れることを日本中に、世界に伝えたい」。

 東京マラソンの代わりに1日は、横浜市内のスケート場で45年ぶりにスケートに挑戦する予定だ。もちろん、米山さんとツールが一緒だ。

 生まれつき耳が聞こえず弱視だった。ろう学校を卒業後就職し、結婚。2人の子どもを育てた。網膜色素変性症で20年ほど前からさらに視力が落ち、わずかに光を感じる程度となった。盲ろう者と支援者らの団体「神奈川盲ろう者ゆりの会」の企画部長として、社会参加の先頭に立つ。

     ◇

 〈盲ろう者〉 視覚と聴覚の両方に障害がある人。全国に約1万4千人いると推計されている。全国盲ろう者協会によると、通訳・介助サービスを利用している盲ろう者は1割足らずで、外出して活動できていない人が多い。著名な人としてはヘレン・ケラーや東大教授の福島智さんらがいる。




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