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ハンセン病法廷 司法の過ち直視した違憲判断(2020年2月28日配信『読売新聞』-「社説」)

 裁判におけるハンセン病患者への人権侵害に、正面から向き合った司法判断と言えよう。

 約70年前に熊本県で起きた「菊池事件」を巡る訴訟の判決だ。熊本地裁は、隔離されたハンセン病療養所の菊池恵楓園などに設けられた特別法廷が「法の下の平等を定めた憲法に反する」と指摘した。

 ハンセン病を理由とする特別法廷は、90以上の裁判で設置された。最高裁は2016年の報告書で、隔離の必要性がなくなった1960年以降の設置手続きは「裁判所法に違反していた」と認めたが、違憲性には触れなかった。

 今回、熊本地裁が裁判手続きを規定する裁判所法の違反にとどまらず、基本的人権を保障する国の最高法規である憲法に違反する、と踏み込んだ意義は大きい。

 菊池事件では、ハンセン病患者とされた男性が殺人罪に問われ、特別法廷で死刑を言い渡されて62年に刑が執行された。今回の訴訟では、菊池恵楓園の入所者らが、検察が再審請求しないのは不当だとして国家賠償を求めていた。

 判決は、男性の親族でない入所者らに賠償請求権はないとして、請求を棄却した。一方で「特別法廷での審理は、被告がハンセン病患者であることを理由とした合理性を欠く差別だ」と述べた。

 菊池事件の特別法廷では、裁判官や検察官が証拠品を扱う際に、ゴム手袋をはめ、箸を用いていた。今回の熊本地裁判決は、こうした偏見に基づく差別的な取り扱いを問題視したのだろう。

 判決が、特別法廷について、憲法が定める裁判の公開原則に反していた疑いがある、と言及したことは注目される。

 特別法廷は、裁判所が被災するなど、やむを得ない場合のみ、例外的に認められるものだ。しかし、最高裁はハンセン病を理由とした特別法廷の設置を、具体的な事情を検討せずに許可していた。

 特別法廷は、社会から隔絶された療養所などに置かれた。判決が「一般国民が訪問するのは事実上不可能で、傍聴を拒否したに等しい」と述べたのはもっともだ。

 最高裁は、今回の判決を真摯しんしに受け止め、司法が犯した過ちを直視しなければならない。

 菊池事件で刑を執行された男性の親族は現在、差別を恐れて名乗り出ることができない状況にあるという。昨年11月には、ハンセン病元患者だけでなく、家族の名誉回復を図る法改正が行われた。




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