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「おまえが生きとると親戚中が困るけん」(2020年2月28日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

「おまえが生きとると親戚中が困るけん」。拘置所に面会に来た老人が悲痛の表情で被告人に語る。ハンセン病と差別をテーマにした中山節夫監督の映画『新・あつい壁』の一場面

▼殺人の疑いで逮捕され、ハンセン病とされた男は無実を訴える。冤罪[えんざい]を疑わせる根拠もあった。しかし警察や裁判所は、男を犯人と決めてかかったように事件処理を急ぐ。療養所に設けた特別法廷のずさんな審理で死刑が確定し、執行されてしまう

▼モデルとなったのは70年ほど前の事件だが、その事件を巡る実際の裁判で熊本地裁判決があった。人権無視の特別法廷は憲法違反として審理のやり直しを求める原告らが、「偏見を恐れる家族に代わって検察官が再審請求すべきだ」と訴えた裁判である

▼判決は特別法廷での審理について「不合理な差別」として初めて違憲と踏み込む一方、それは「直ちに裁判の事実認定には影響しない」と検察が再審を請求しないことは容認した。果たして再審への道は

▼冒頭の言葉について、映画で療養所に暮らす元患者が「ここに入ってるもんは誰でも、同じようなことを言われた覚えはあっとです」とつぶやく。無実を訴えた男を追い詰めたのは司法はもとより、社会に積もり積もったゆがんだ視線、私たちでもあった

▼折しもコロナウイルス禍である。マスクなしでせきをした人が別の人とトラブルになったことがあった。国内でそして世界で、患者や疑いのある人への差別的言動が頻発しているという。過ちを何度繰り返すのか。



キャプチャ

解説
デビュー作「あつい壁」でハンセン病患者とその家族に対する差別の実態を浮き彫りにした中山節夫監督が、実在の事件を基に再びハンセン病問題を描いた作品。ルポライターの卓也は、取材で知り合ったホームレスの男性から、50年前に熊本で起きた殺人事件の話を聞かされる。犯人として捕らえられたハンセン病患者の男性は、裁判で無実を訴えながらも死刑に処されていた。事件を記事にしようと考えた卓也は、取材のために熊本を訪れるが……。

2007年製作/111分/日本
配給:全国映画センター



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ハンセン病 60年根っこの差別変わっていない 通学妨害事件知る2人訴え 映画化した監督×当時の在校生(2020年1月26日配信『東京新聞』)

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「黒髪校事件」を振り返る三浦俊一さん(左)と中山節夫監督=23日、東京都渋谷区で

 東京都内で開かれている「ハンセン病映画祭」で、熊本市の小学校で起きた差別事件を取り上げた映画「あつい壁」が上映されることがきっかけで、当時の小学校に通っていた男性と監督が顔を合わせた。「社会の差別意識は変わっていない」と二人は共鳴し、映画祭が問題を考えるきっかけになることを期待している。26日は差別根絶を呼び掛ける「世界ハンセン病の日」。 

 映画の題材となったのは熊本市の黒髪(くろかみ)小学校で1954年に起きた「黒髪校事件」。国立ハンセン病療養所「菊池恵楓(けいふう)園」(熊本県合志市)の入所者の子どもで、熊本市内の寮で生活していた新1年生たちが「健康で感染の恐れなし」と確認されて同小へ通うことになったが、PTAの一部が通学を妨害し、自分の子どもを休ませるなどの抗議行動を起こした。

 対立は1年続き、寮の児童たちは全国各地の施設へ引き取られ、寮も廃止された。

 1年生の1人だった三浦俊一さん(72)=大阪市在住=は、分裂した地域の雰囲気を「子ども心にも怖かった」と振り返る。三浦さんは親の意向で通学したが、他に登校初日に教室にいたのは、教員やキリスト教徒の子どもなど3人だけ。通学しなかった友人からは下校中に石を投げられた。

 70年に製作された「あつい壁」は事件の実話を基に、ハンセン病の親や寮の児童の悲劇を描き、病気への偏見と差別を告発した。中山節夫監督(82)は当時高校生で、菊池恵楓園近くに自宅があり、ハンセン病に関心があった。作品がハンセン病映画祭で上映されると知った三浦さんが、鑑賞を主催団体に申し込んだ際に生い立ちに触れ、対面につながった。

 2時間にわたり当時の様子を話した2人は「学校の問題で対立した人同士の亀裂は、その後も残り続けていた」と溝の深さをしみじみと実感していた。

 三浦さんの姉(87)はハンセン病関連施設の検査技師をしており、一緒に働いた看護師ともども縁談が破談になった。「患者や家族以外も差別を受けた実態を知ってほしい」と願う。中山監督も「自分が同じ差別される立場だったらと、多くの人に考えてほしい」と話している。

 ハンセン病映画祭は「笹川保健財団」(東京)の主催で、ハンセン病をテーマにした映画4本を都内各地で上映する。初回は今月22日に行われ、今後は2月21、23、24日、3月29日にあり、「あつい壁」は3月29日午後1時半から、東京都港区赤坂一の日本財団ビルで上映。無料で、申し込みが必要。映画祭事務局=電080(6687)4118=へ。

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映画「あつい壁」の一場面から=(c)ハンセン病映画祭




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