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[ハンセン病特別法廷]違憲判決を再審の道に(2020年3月2日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 ハンセン病患者とされた男性が隔離先の療養所などに設置された特別法廷で死刑判決を受け、執行された「菊池事件」を巡り、熊本地裁は特別法廷での審理は「憲法違反」とする判断を示した。

 隔離政策下の特別法廷に関する司法判断は初めて。人権のとりでの司法は過去の特別法廷が断罪されたことを深刻に受け止めるべきだ。

 ハンセン病療養所への入所を勧告されていた男性が1952年、熊本県内の村の元職員を殺害したとして殺人罪などに問われた事件である。

 審理は国立療養所菊池恵楓園(熊本県合志(こうし)市)や隣接する菊池医療刑務支所の特別法廷で行われた。男性は一貫して無罪を主張した。国選弁護人は検察側の証拠に全て同意し、十分な弁護さえ受けられず、57年に死刑判決が確定した。凶器と被害者の傷が合わず、弁護活動も不十分だったなどとして3回再審請求したがいずれも退けられ、62年に刑が執行された。

 元患者らが検察が再審をしないのは違法だとして国に損害賠償を求め提訴した。

 特別法廷は消毒液のにおいが立ちこめ、裁判官・検察官・弁護人はいずれも予防衣を着用した。長靴を履き、ゴム手袋を着けた上で調書や証拠物を火箸などで扱うという個人の尊厳を傷つける非人間的な扱いがなされた。

 判決は偏見や差別で人格権を保障した憲法に違反すると判示。「当時の科学的知見に照らせば合理性を欠く」と憲法の法の下の平等にも違反すると認定した。これまでは隔離政策が明白に違憲となる時期を「遅くとも1960年」(2001年熊本地裁判決)としていたが、1952年の審理も違憲と踏み込んだ。

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 特別法廷は裁判所法に基づき、最高裁が必要と認めた場合に裁判所外で開く法廷のことである。災害で裁判所が使えないなど、やむを得ない場合に限られるのに、2016年の最高裁の調査報告書によると、ハンセン病という理由だけで特別法廷は1948~72年に95件開かれている。

 最高裁は2016年に特別法廷を裁判所法違反と謝罪する一方で、違憲性は言明していなかった。判決は憲法の裁判公開の原則にも違反した疑いがあると指摘した。

 最高裁は原告側が「裁判史上最大の汚点」と位置付ける特別法廷での死刑判決に正面から向き合い、裁判所の責任の所在を明確にする必要がある。そのためには最高裁は再検証することが欠かせない。

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 男性の言葉に尽くせぬ無念さを思えば名誉回復が図られなければならない。遺族は差別や偏見を恐れ、再審請求には踏み切れなかったという。

 判決は原告らが、請求権のある被告や親族でないとして再審を認めなかった。特別法廷が違憲で、その正当性が問われているのにである。

 最高検は特別法廷への関与を謝罪している。違憲判決に従い、起訴した検察自ら再審請求し、裁判所は審理をやり直さなければならない。

 今回の特別法廷を巡る訴訟をはじめ一連のハンセン病問題が解決に至るにはまだ道半ばと言わざるを得ない。




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