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特別法廷「違憲」 “司法の差別”に重い判断(2020年3月3日配信『山陽新聞』-「社説」)

 司法による過去の人権上の過ちを、自ら断罪した画期的な判決といえよう。

 ハンセン病患者とされた男性が、殺人罪などに問われて死刑となった「菊池事件」を巡り、熊本地裁は、隔離先の療養所などに設置された特別法廷での審理を「違憲」とする初の判断を示した。

 事件は1952年に熊本県内で起きた。ハンセン病療養所への入所勧告を受けていた男性が、村の元職員を殺害したとされる。男性は一貫して無実を主張したが、死刑が確定し62年に執行された。

 今回の裁判で原告となった他の患者らは、特別法廷での死刑判決を「裁判史上最大の汚点」とし、憲法判断を迫った。さらに検察が再審請求しないのは違法だとして国に損害賠償を求めていた。

 判決は、特別法廷の審理が偏見や差別に基づき、人格権を保障した憲法13条に違反するとした。裁判官と検察官がゴム手袋をはめ、箸で証拠を扱ったことにも触れ、「当時の科学的知見に照らせば合理性を欠く差別だ」とし、法の下の平等を定めた憲法14条にも違反していると断じた。裁判公開の原則に反する疑いも指摘した。

 司法の場で人権侵害を明らかにして尊厳を取り戻したいと、提訴に踏み切った元患者らの切なる思いに応えたものといえる。

 特別法廷は最高裁が必要と認めた場合に、裁判所以外で開かれる法廷である。ハンセン病患者の裁判は48~72年に95件を数え、岡山県内でも20件が開かれた。最高裁が許可しなかった例はなく、機械的に行われたことを物語る。

 最高裁は2016年にまとめた調査報告書で、国の隔離政策の違憲性を認めた01年の熊本地裁判決を根拠に、1960年以降の特別法廷については裁判所法違反を認めて謝罪したが、違憲性については明言を避けた。今回の判決が60年の壁を越え、52年の審理までさかのぼって違憲だったと指弾した意義は大きい。

 一方、再審請求しない検察の判断について地裁は「裁判の審理に憲法違反の疑いがあるとしても、直ちに刑事裁判の事実認定に影響を及ぼす手続き違反とはいえない。著しい不合理ではない」との考えを示した。国家賠償請求も退けた。

 しかし、特別法廷を違憲とするのなら、閉鎖的な隔離法廷で行われた審理の正当性に疑問が残るのは当然だ。このままでは司法に対する信頼にかかわろう。

 男性の遺族らは無実を信じながらも、偏見や差別を恐れて再審請求に踏み切れなかった。無念さは、いかばかりだったか。

 検察にはこうした事情なども考慮し、再審請求に向かう必要があろう。最高裁には、司法が差別の助長に加担した“負の歴史”に向き合い、さらなる検証を尽くすとともに、自らの責任を明確にするよう求めたい。




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