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過労死が多い職種、なぜトラック運転手等が1位?残業月65時間で疾病リスク&労災訴訟激増(2020年3月4日配信『Business Journal 』)

文=松嶋千春/清談社

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 厚生労働省が「過労死」の認定基準の見直しに本格的に乗りだした。2019年11月、脳・心臓疾患の労災認定基準について、加藤勝信厚生労働大臣が「2020年度中に有識者による検討会を設置する方針」を正式に発表したのだ。「過労自死(過労自殺)」なども含む精神障害による労災の認定基準についても、別の検討会を設けるという。

 現在、脳・心臓疾患で死亡した場合の労災認定の基準、いわゆる「過労死ライン」の残業時間は「直近1カ月で100時間」「2~6カ月平均で80時間」となっている。この基準は2001年に定められたものだが、約20年ぶりに見直されることとなるのだ。

過労死ラインは「月65時間」にすべき

 厚労省が発表した「労災補償状況に関する調査(平成30年度)」によれば、脳・心臓疾患の時間外労働時間別支給決定件数は、全体223件のうち、月45~60時間未満が2件、月60~80時間未満が13件、計15件だった。月80時間未満の残業時間で労災認定されているケースは全体の10%程度だが、「過労死問題においては大きな意味がある」と過労死弁護団全国連絡会議・代表幹事の松丸正弁護士は言う。

「私が過労死問題に取り組み始めた1980年代初頭は、発症の前日または当日に異常な負荷があったかどうかでしか判断されておらず、それが87年には発症前1週間、さらに2001年には6カ月間、と認定基準が変わってきました。それは行政が変えたのではなく、『過労死なんて存在しない』と言われていた時代から、遺族がその時々の認定基準に対して疑問の声を上げ続けてきた結果です」(松丸氏)

 全国の過労死問題に取り組む過労死弁護団全国連絡会議は、18年5月に「脳・心臓疾患の労災認定基準の改定を求める意見書」「心理的負荷による精神障害の労災認定基準の改定を求める意見書」を厚労省に提出した。彼らが提唱している過労死ラインの残業時間は「月65時間」だ。

 では、なぜ「月65時間」なのか。松丸氏は以下のように説明する。

「残業時間が過労死ラインの月80時間に満たなくても質的な負荷要因が認められるケースでは、病気発症との相関性が強まるのが月65時間前後だからです。また、月45時間未満の場合、大半は訴訟にまで至りませんが、月65時間を超えると労災認定の裁判を起こすケースが多くなります。

 過去6カ月間の慢性的な残業だけでなく、発症前1週間という短期間、あるいは6カ月より前の過重業務とのかけ合わせで認定される判例もあります。被災者救済という観点からいえば、認定されるかどうかのグレーゾーンで戦っている人が多い『月65時間』に基準が変わることで、大きく救済が進むのではないでしょうか」(同)

過労死を招く、見えない「負荷要因」

 前述の厚労省の調査によると、過労死が多い職種の1位は「自動車運転従事者」だ。たとえば、長距離トラックの運転手の場合は深夜の運転などで常に精神的な緊張を強いられる。このような、労働時間では測れない「負荷要因」も労災認定に深くかかわってくる。

「現状でも、必ずしも80時間でギチギチに縛っているわけではありません。たとえば、拘束時間の長い勤務、出張の多い勤務、不規則な交代制勤務や深夜勤務など、残業時間以外の負荷要因も加味されて、80時間に満たなくても過労死と認められるケースはあります」(同)

パワハラも過労自殺の負荷要因のひとつに

過労死弁護団全国連絡会議は「過労死110番」という電話相談活動を定期的に実施している。開設日にはひっきりなしに電話が鳴り、5時間で200件を超える相談が寄せられるという。19年6月15日実施分でもっとも多かったのは「過労死予防・過重労働等相談」で、次いで多かったのはパワハラに関する相談だ。「どこに相談したらよいかわからず、ここにかけた」という声も多く聞かれるそうだ。パワハラもまた、過労自殺の負荷要因のひとつである。

「パワハラは職場の窓口に相談しても処分に至らなかったり、相談したことで自分が社内にいづらくなったりする例もあります。また、はっきりと人格否定をするような発言はパワハラと認められやすいですが、陰口や村八分的なイジメなどの目立たない嫌がらせも存在します。今後は、ハラスメントの実態を踏まえたかたちの認定基準の改正が必要になると考えます」(同)

 19年12月23日、厚労省の労働政策審議会の部会で、過労死認定の判断材料に「副業の労働時間」や「心理的な負荷」を盛り込む方針が発表された。現行の過労死認定基準は労働時間に比重が置かれているが、「今後は、より個別具体的な質的な負荷要因についても検討すべき」と松丸氏は指摘する。

「疾患を持っており障害者枠で採用された方や高齢者など、労働者の健康的な意味での属性をどの程度評価していくのか。また、本業と副業の労働時間の管理の整備をどうするのかなど、依然として曖昧な部分は多い。過労死弁護団としては、これからも行政に対して専門家としての意見を積極的に投げかけていく所存です」(同)

 働き方改革に伴い、過労死の問題もあらためてクローズアップされているが、課題は山積みなのが現実だ。





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