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ハンセン病特別法廷違憲判断 司法は重く受け止めよ(2020年3月7日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 ハンセン病患者とされた男性が殺人罪に問われ、隔離された「特別法廷」で死刑判決を受けた「菊池事件」を巡り、熊本地裁は先月末、特別法廷を違憲とする判断を下した。特別法廷の適否に関する司法判断は今回が初めてとなる。

 特別法廷での審理について地裁は「人格権を侵害し、患者であることを理由とした不合理な差別だ」と明言した。裁判所が過去の憲法違反を自ら断罪するのは異例で、画期的な判断だ。司法は人権を守る役割を担っているにもかかわらず、差別や偏見を助長した責任を重く受け止め、患者らの名誉回復に努めなければならない。

 特別法廷は裁判所法に基づき最高裁が必要と認めた場合に裁判所外で開かれる法廷。ハンセン病患者の裁判では撤回1件以外認められ、1948~72年に95件開かれた。菊池事件は50年代に審理され、男性は一貫して無実を訴えたが死刑となった。

 最高裁は2016年の報告書で、必要性を審査しておらず特別法廷は裁判所法違反だったと認め謝罪したが、違憲とは明示していない。今回の訴訟では、検察が事件の再審請求をしないのは不当だとして、元患者6人が国に損害賠償を求めていた。

 国の隔離政策が明白に違憲となる時期は、01年の熊本地裁判決で「遅くとも1960年」とされている。最高裁の報告書も60年以降の特別法廷に限って違法とした。だが、今回の判決はさかのぼって50年代の審理も違憲だったと断じた。報告書からさらに踏み込み、ハンセン病問題の関係者の権利回復へ一歩前進したと評価できる。

 判決は、菊池事件の特別法廷の審理は偏見や差別に基づき、人格権を保障した憲法13条に違反すると判断。裁判官や検察官が手袋をし、箸を使って証拠を扱ったことは、法の下の平等を定めた14条にも違反しているとした。憲法が定める裁判公開の原則に反する疑いも指摘した。公正であるべき裁判で人権が著しく侵害されていたのは明白であり、許されないことだ。

 一方で判決は、審理が違憲でも直ちに事実認定に影響するとは言えず、再審の理由はないとした。再審請求権は有罪を受けた本人と遺族のほか検察官にもある。今回の訴訟の背景には、男性の遺族が差別を恐れて請求に踏み切れず、弁護団が検察に請求するよう要請したが拒否されていた経緯がある。

 通常の感覚では、裁判手続きが違憲なら判決自体にも疑義が生じる。ましてや差別や偏見に満ちていた法廷だ。男性が受けた被害を回復するには、裁判のやり直しが当然だろう。今なお差別に苦しむ元患者や遺族にこれ以上負担を強いてはならず、検察は再審請求をすべきだ。

 国によるハンセン病患者の隔離政策がもたらした被害は大きく、社会の差別意識も根強い。最高裁は差別や偏見を根本的に解消するために、司法の負の歴史を再検証する必要がある。




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