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ハンセン病法廷 司法の差別問う違憲判決(2020年3月8日配信『新潟日報』-「社説」)

 差別と偏見に基づいた司法の場での人権侵害が厳しく断罪された。違憲判決を最高裁は重く受け止めなければならない。

 ハンセン病患者とされた男性が1950年代に殺人罪に問われ、隔離先の療養所などに設けられた特別法廷で死刑判決を受けた「菊池事件」の審理は、憲法に反するのではないか。

 元患者らの訴えに対し、熊本地裁は「特別法廷での審理は人格権を侵害し、患者を理由とした不合理な差別で、憲法に違反する」との判断を示した。

 ハンセン病を理由に開かれた特別法廷を違憲とした司法判断は初めてだ。

 最高裁は2016年にまとめた調査報告書で、ハンセン病を理由にした特別法廷を裁判所法違反と認め謝罪。しかし、憲法違反については「強く疑われるが、具体的状況が分からず判断できない」としていた。

 地裁判決は最高裁より踏み込み、司法自ら過去の過ちにしっかり向き合うべきだと示した点で意義は大きい。

 特別法廷は事実上密室で行われた。被告人以外は予防着を着用し、裁判官と検察官はゴム手袋をはめ、箸などを使って証拠物を扱った。

 男性は無実を訴えたものの、1957年に死刑判決が確定した。3回の再審請求も退けられ、62年に死刑執行された。

 原告側は裁判をやり直すべきだとして、検察に再審請求するよう求めたが、最高検が拒否したため2017年に提訴した。

 地裁は特別法廷での審理について、人格権を保障した憲法13条や法の下の平等を定めた14条に違反していたと断じた。

 さらに37条と82条が定める裁判公開の原則にも違反した疑いがあると指摘した。

 特別法廷は裁判所法に基づき、最高裁が必要と認めた場合に裁判所外で法廷を開くことができる。ハンセン病患者は一律に特別法廷で審理され、1948~72年に95件が開かれた。

 菊池事件が起きた当時は既にハンセン病の治療法が確立しつつあった。国はこれを知りながら、ハンセン病患者の隔離政策を続けた。

 2001年の熊本地裁判決は、国の隔離政策が明白に違憲となる時期を「遅くとも1960年」とした。

 今回の判決はそれ以前の審理も違憲だったとした。他の特別法廷についても改めて違憲性が問われよう。

 ただ、再審に関する熊本地裁の判断には疑問が残る。

 地裁は「審理に憲法違反の疑いがあるとしても、刑事裁判の事実認定に影響を及ぼす手続き違反ということはできない」として、検察が再審請求しないことは不合理ではないとした。

 人間の尊厳をないがしろにした裁判が公正な審理といえるのか。裁判所や検察は再審の拡大に向け積極姿勢を示すべきだ。

 差別根絶のためにも、過去の過ちを直視し、教訓をくみ上げなければならない。最高裁は地裁判決を尊重し、明確なメッセージを発信すべきだ。




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