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益田市手話言語条例制定

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 島根県益田市議会は3月定例会最終日の2020年3月24日、手話を言語と位置づけ、手話への理解促進と普及、手話での意思疎通が円滑にできる環境整備を目指す「益田市手話言語条例」案を可決した。施行は、2020年4月1日。

 条例は、手話に関する施策を進めて全ての市民が共生できる地域社会の実現を目的とし、市には必要な施策を実施する責務があり、市民は市の施策に協力するよう努めると定めている。

 同種の条例は島根県内では出雲市に次いで2例目。全国では310例目。

 当日、議場では市聴覚障害者協会の会員らが傍聴し、条例制定を喜んだ。同協会の金井和義会長(67)は「聞こえる人と豊かなコミュニケーションができる環境が整えばうれしい」と話し、学校教育を通した普及などを期待した。

 山本浩章市長は「ろう者だけでなく、いろいろなハンディがある人に配慮できる町になるための第一歩」と語った。

 市は、2019年12月2日から12月27日まで「益田市手話言語条例(仮称)」(案)に対するパブリックコメントを行い、3名(ファックス2名、持参1名)から計9件の意見が出された(意見と市の考え方)。

 なお、市内で手話を使って生活するろう者は約30人。

 浜田市と並び島根県西部、特に石西(せきせい)地域の中心都市であり、浜田市、大田市と共に石見三田(いわみさんだ)と呼ばれている益田市は島根県西端に位置し、北は日本海、南は1,000mを超える雄大な山々を有する中国山地があり、そこに源を発する「高津川(たかつがわ)」・「匹見川(ひきみがわ)」が流れ、雄大な自然に囲まれている。

 なかでも、清流日本一といわれる高津川は、一級河川の中でも珍しくダムがないため、つねに新鮮で豊かな水量を湛え、たびたび増水することで川底を一掃し、清流が保たれている。そのため、良質のコケが発生し、薫り高い鮎(あゆ)が生まれおり、この天然の鮎は人気が高く、益田市の名産品の一つになっている。また奥深い山中の流域は「匹見(ひきみ)ワサビ」の産地として有名で、安曇野(あずみの)ワサビ(長野県安曇野市)、有東木(うとうぎ)ワサビ(静岡市)とともに、日本三大ワサビと呼ばれている。

 市の人口は、46,116人(男性;21,762人/女性;24,354人)、21,295世帯(2020年2月末現在)。

 なお、市内で手話を使って生活するろう者は約30人。



「益田市手話言語条例(仮称)」(案)

1.条例案を作成するにあたって

条例案を作成するにあたり、①当事者及び手話通訳者との意見交換会、②庁内検討会議、③手話言語条例講演会アンケートにおいて出された意見をもとに、具体的な条文及び解説を作成しました。
①当事者及び手話通訳者との意見交換会は、日中と夕方の2回に分けて開催し、耳が聞こえないことにより普段の生活で困っていることや、こういう社会なって欲しいと思う要望の聞き取りを行いました。医療機関受診の際や観光、職場、地域での課題等をお話しいただきました。
②庁内検討会議では、関係課(学校教育課、子ども家庭支援課、子ども福祉課)と当事者意見交換会で出された意見を共有し、条例案の施策に係る部分について検討を行いました。
③令和元年10月12日に「手話言語条例講演会」を開催(71名参加)し、62名の方にアンケートへの回答をいただきました。「ろう者とろう者以外の者が共生するために必要な施策」についての回答は、「手話言語普及のための市民への啓発」が最も多く、82%の方が必要であると回答されました。
 これらのことを踏まえ、以下の条文案について、検討します。

2.条例文案及び解説

< 前文 >
( 条文案 )
 手話は、手指や体の動き、表情により視覚的に表現する独自の言語である。ろう者にとって、物事を考え、意思疎通を図り、知識を蓄え、文化を創造する上で欠かせない言語として、大切に受け継がれてきた。
 しかしながら、これまで手話が言語として認められてこなかったことや、手話を使用することができる環境が整えられてこなかったことなどから、ろう者は、必要な情報を得ることができず、多くの不便や不安を感じながら生活してきた。
 こうした中で、障害者の権利に関する条約や障害者基本法において、手話は言語として位置付けられた。
 益田市においては、障がいのある人もない人も個人の尊厳が重んじられ、地域の一員として安心して暮らせるまちを築くことを目的に益田市障がい者基本計画を策定するとともに、手話通訳者等の養成研修や手話通訳者等の派遣事業など、地域で障がい者が社会参加するための環境整備に取り組んできたところである。一方で、市民が手話に接する機会は少なく、市民の手話に対する理解が十分に深まっているとはいえない状況にあり、手話による意思疎通や情報の取得ができる環境を整備するため、さらなる取組を進めていかなければならない。
 そこで、手話は言語であるとの認識に基づき、今後更に手話の理解と広がり及び手話文化の継承をもって、障害の有無に関わらず全ての市民が基本的人権を有する個人として尊重され、地域で支え合いながらお互いの人格と個性を尊重し合うことができる社会の実現を図るため、この条例を制定する。

解説: 前文では、この手話言語条例を策定する背景やこれまでの益田市の取組について説明しています。
 2006年の国連総会で採択された障害者権利条約により、手話は言語であると位置付けられ、日本では、2011年の改正障害者基本法の中で、「言語(手話を含む)」と表記され、言語として認められることとなりましたが、それまで手話が言語として認められていなかったことにより、手話を利用する環境の整備が進まなかったという経過があり、ろう者の方が生活するためには不便な社会となっていました。
 益田市では、手話通訳者を職員として雇用し、手話通訳者等の養成研修や手話通訳者等の派遣事業等を行い、地域で障がい者が社会参加するための環境整備に取り組んできたところですが、市民や地域社会における手話への理解が十分とはいえない状況にあり、今後さらなる取り組みが必要となっています。


<1.目的>
( 条文案 ) この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話に対する理解の促進及び手話の普及並びに地域において手話を使用しやすい環境の構築に関し基本理念を定め、市、市民及び事業者の責務を明らかにするとともに、手話に関する施策の基本的事項を定めることにより、総合的かつ計画的に施策を推進し、もって全ての市民が共生できる地域社会の実現を図ることを目的とする。

解説: 本条では、条例の目的は「手話が言語であるという認識に基づいて、全ての市民が共生できる地域社会の実現を図ること」であるということを明確にしています。ろう者が地域社会において安心して生活するためには、市民及び事業者の理解と協力が必要であり、計画を策定し、総合的かつ計画的に施策の推進に取り組む必要があります。

<2.定義>
( 条文案 )
(1) ろう者 聴覚に障害がある者のうち、手話を言語として日常生活及び社会生活を営むものをいう。
(2) 手話通訳者 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援する法律(平成17年法律第123号)第78条第1項の特に専門性の高い意志疎通支援を行う者のうち、手話通訳を行うものをいう。
(3) 手話通訳者等 手話通訳者及び手話による意志疎通支援を行うものをいう。
(4) 事業者 市内において事業活動を行う個人及び法人その他の団体をいう。

解説: 本条では、本条例で用いる基礎的な用語について定義しています。
(1)「ろう者」とは、聴覚に障害がある者のうち、手話を言語として日常生活、社会生活を営んでいる方のことを言います。
(2)「手話通訳者」とは、手話通訳士及び手話通訳者のことを言います。
(3)「手話通訳者等」とは、手話通訳士、手話通訳者、手話奉仕員、手話サークルにおいて活動されている方、その他の手話による意志疎通支援を行う方のことを言います。
(4)「事業者」とは、市内で事業活動を行う個人、法人、団体のことを言います。本社や本店が市外である場合であっても、事業所が市内にある場合は含まれます。


<3.基本理念>
( 条文案 )
手話に対する理解の促進及び手話の普及並びに地域において手話を使用しやすい環境を構築するための施策の推進は、次に掲げる理念を基本として行わなければならない。
(1) 全ての市民が、自らの選択した言語により意思の疎通を図る権利を有することを踏まえ、人格と個性を尊重しあいながら、心豊かに共生することができる地域社会を実現すること。
(2) 手話は、ろう者にとって日常生活及び社会生活を営む上で重要な独自の言語であること。
(3) ろう者が有する手話による意思疎通を円滑に図る権利は、尊重されなければならないこと。

解説: 本条では、手話に関する施策を推進する上での基本的な理念を定めています。
(1)全ての市民が自分の選択した言語により意思疎通を図る権利があることを、全市民が認識し、人格と個性を尊重しないながら共生できる地域社会の実現を図ることが必要です。
(2)「手話」は、ろう者にとって日常生活、社会生活を営む上で重要な言語であり、音声言語とは異なる独自の言語であるという認識を持つことが必要です。
(3)ろう者が手話により意思疎通を円滑に図ることは、ろう者が持つ権利であり、その権利は尊重されなくてはなりません。


<4.市の責務>
( 条文案 )
市は、前条に定める基本理念にのっとり、手話の理解及び普及の促進に努め、手話による意思疎通を円滑に図ることができる環境を整備するために必要な施策を実施するものとする。

解説: 本条では、市が基本理念に基づいて、手話の理解と普及促進に努め、手話による意志疎通を円滑に図るための環境整備のために必要な施策を実施することを定めています。具体的な施策については、第7条にて規定しています。

<5.市民の責務>
( 条文案 )
市民は、基本理念についての理解を深め、手話に関する市の施策に協力するよう努めるものとする。

解説: 本条では、全ての市民が基本理念について理解を深め、全ての市民が共生できる地域社会を実現するために、市が実施する手話に関する施策に対し、市民の方の理解と協力が必要であるということを定めています。

<6.事業者の責務>
( 条文案 )
事業者は、基本理念を踏まえ、市の施策に協力するよう努めるとともに、従業者に対する研修その他必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

解説: 市内の事業者が基本理念について理解を深め、市が実施する手話に関する施策に協力するとともに、従業者に研修を行うことや、ろう者が働きやすい環境づくり、ろう者が利用しやすいサービスを提供する等、全ての市民が共生できる地域社会を実現するためには、事業者の協力が必要であるということを定めています。

<7.計画の策定及び推進>
( 条文案 )
1 市は、障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第3項の規定により策定する障害者のための施策に関する基本的な計画において、次の各号に掲げる施策の取組について定め、これを総合的かつ計画的に実施するものとする。
(1) 手話に対する理解及び手話の普及を図るための施策
(2) 市民が手話による情報を得る機会の拡大のための施策
(3) 市民が意思疎通の手段として手話を選択することが容易にでき、かつ、手話を使用しやすい環境の構築のための施策
(4) 手話通訳者等の養成、確保、処遇改善のための施策
(5) 手話を獲得する機会の確保のための施策
(6) 前各号に掲げるもののほか、市長が必要と認める事項
2 市は、前項の施策の実施に当たっては、ろう者及び手話通訳者等その他の関係者の意見を聞くため、これらの者との協議の場を設置するものとする。

解説: 本条では、市が益田市障がい者基本計画(計画期間=6年間)において、施策を定め、計画的に実施することと、実施する施策の項目について定めています。
(1)では、市民や事業者その他の団体に対して手話の理解、普及を図るための施策(例えば住民説明会の開催、手話勉強会の開催、パンフレットの作製等)を想定しています。
(2)手話による情報取得の機会の拡大のための施策(例えばケーブルテレビの活用や、タブレット端末の設置、聴覚障害者用情報受信装置等の設置等)が必要となります。
(3)手話を意志疎通の手段として選択するためには、ろう児だけでなくその保護者も手話を学ぶ必要があり、学ぶ環境を整える必要があります。手話を使いやすい環境とするためには、市民や事業者の手話に対する理解促進や手話通訳者の人員確保、手話通訳派遣事業を利用しやすくすること等を行う必要があります。
(4)手話を利用しやすい環境を構築するためには手話通訳者等の協力が必要ですが、現在手話通訳ができる人材が少なく、長時間手話を行うことにより、頚肩腕障害となる可能性も高く、それを防止するためにも手話通訳者の健康管理のための施策、人員確保のための施策、処遇改善のための施策が必要となっています。
(5)手話を獲得する機会とは、手話を第1言語として身につけるという意味で、乳児期のスクリーニング検査により聴覚に障がいがある可能性がある場合は、関係機関と連携を行い、相談事業所や(必要に応じて)手話を学ぶことができる機関へつなげることが必要です。
(6)(1)~(5)の他、市長が必要と認める施策について実施をしていきます。
以上の施策の検討、実施の際には、当事者と手話通訳者等その他関係者の意見を聞くため、協議の場を設置することとします。

<8.委任>
( 条文案 )
この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

解説: この条例の施行に関し必要な事項があれば規則等に定めることとします。










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