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大崎事件、第4次再審を請求 92歳女性の弁護団、新証拠提出(2020年3月30日配信『西日本新聞』)

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大崎事件の第4次再審請求を鹿児島地裁に行うため地裁に入る弁護団=30日午前、鹿児島市

 鹿児島県大崎町で1979年に男性の遺体が見つかった大崎事件で、一貫して無実を訴えてきた原口アヤ子さん(92)の弁護団が30日、鹿児島地裁に第4次の再審請求を申し立てた。新証拠として、被害者の死因と死亡時期に関する医学鑑定書と、関係者2人の供述を分析した鑑定書などを提出。「大崎事件は殺人事件ではない」としている。

 原口さんは捜査段階から関与を否定したが、確定判決は男性の死因を窒息死とし、共犯とされた元夫や親族らの自白などを根拠にタオルで絞殺したと認定。原口さんは懲役10年の判決を受け、服役した。

 第3次再審請求で福岡高裁宮崎支部は、被害者が遺体で見つかる3日前に自転車で側溝に転落、関係者に搬送されていたことを重視。事故死だった可能性を指摘し再審開始を認めたが、最高裁が「死因または死亡時期に関する認定に決定的な証明力を有するものとまではいえない」として再審開始を取り消していた。

 4次請求で弁護団は、死因を腸内の大量出血による「急性腸管壊死(えし)」と特定した救命救急医の鑑定書を新たに提出。転落事故で頸髄(けいずい)を損傷し、低体温症も重なって腸に血液が回らなくなり、細胞が壊死して出血したことが原因だった-と説明している。

 確定判決は、路上に倒れていた被害者を自宅に搬送した関係者2人の供述を根拠に「殺害時刻」を認定していたが、新鑑定で弁護団は「(自宅に搬送された時点で)既に死亡していた可能性が極めて高い」と主張。2人の供述の信用性を否定する鑑定結果も示した。

 原口さんは現在認知症で入院しており、長女が代わって再審請求した。弁護団は、高齢の原口さんに配慮し、迅速に審理を進めるよう地裁に申し入れた。



新鑑定に揺らぐ被害者の死因 第4次再審請求へ 検証・大崎事件(1)(2020年2月17日配信『西日本新聞』)

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「この辺りに倒れていました」と語る西崎良一さん。右側が、被害者が自転車ごと転落したとみられる側溝=1月、鹿児島県大崎町

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被害者宅があった辺りを指さす武田佐俊さん。右手はアヤ子さん方の朽ちた物置小屋=1月、鹿児島県大崎町

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確定判決と高裁の犯行ストーリーの違い

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大崎事件相関図

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現場地図

 大崎事件は1980年の一審判決で「親族間で起きた殺人・死体遺棄事件」と認定され、確定した。

 原口アヤ子さん(92)の当時の夫で長兄の一郎さん、次兄の二郎さん、被害者の四郎さんの3兄弟はいずれも農家で、自宅も隣接していた。酒飲みだった被害者はトラブルを起こすこともあり、兄たちとの仲は良くなかったという。

 事件発生の79年10月12日。確定判決によると、酔いつぶれた被害者が自転車ごと側溝に転落、連絡を受けた隣人のIさんとTさんが午後9時ごろ車で連れ帰る。2人は被害者を土間に運び、帰宅する。

 連絡を受けたアヤ子さんはIさん宅に謝罪に行き、被害者宅へ。「泥酔して土間に座り込む姿を見て日頃の恨みが募り、殺害を決意」「一郎さんと二郎さんに持ち掛けて午後11時ごろにタオルで首を絞めて殺害し、翌13日未明、二郎さんの息子の太郎さんにも頼んで遺体を牛小屋に運び、堆肥に埋めた」-これが確定判決による犯行の流れだ。

 警察の調べに対し一郎さんと二郎さんは、タオルで首を絞めたと「自白」。(1)死因は「首の圧迫による窒息死」とした鹿児島大教授による法医学鑑定(2)「共謀の場面を見た」とする二郎さんの妻の目撃供述-で裏付けられたとされた。

   ◇    ◇

 3度目の再審請求で弁護団は東京医科大の吉田謙一教授による新鑑定を提出した。遺体の解剖所見や写真、死亡前の行動を分析し、死因は「窒息死ではなく、自転車ごと側溝に転落した事故による出血性ショック死の可能性が高い」。「タオルによる絞殺」という自白の信用性を揺るがす新証拠だった。

 2018年の福岡高裁宮崎支部決定は吉田鑑定を基に「被害者は自転車転落事故により、自宅に運ばれた際には出血性ショックで死亡するか、瀕死(ひんし)状態だった可能性が相当程度ある」と指摘した。Iさん、Tさんは「被害者を土間に置いた」と供述していたが、その時、そもそも被害者は生きていたのか-。確定審で信用性が問題になることはなかった「第三者」の2人の供述内容に、吉田鑑定が疑問を差し挟む形になった。

 吉田鑑定を認めれば「土間で座り込む被害者に(アヤ子さんが)殺意を抱く」場面から始まる確定判決の筋書きは成り立たない。高裁は「既に死亡していた被害者が『何者か』によって堆肥に埋められた」というアナザーストーリーに踏み込み、再審開始の結論を導いた。

   ◇    ◇

 これに対し最高裁は、高裁の推認通りであれば「堆肥に埋めたのは最後に被害者に接触したIさん、Tさん以外に想定し難いことになるが、それは証拠上、全く想定できない」と一蹴。Iさん、Tさんの供述内容や共犯者の自白、親族の目撃供述について「相互に支え合っており、供述の変遷に問題があることを考慮しても、信用性は相応に強固だ」として確定判決を「支持」した。

 再審に詳しい元東京高裁裁判長の門野博氏は「搬送した被害者の死亡に驚いて、予想外の行動に出てしまう可能性は全く考えられないだろうか。最高裁は致命的な誤りを犯していないか」と疑問を投げ掛ける。 (親族、関係者は全て仮名。いずれも故人)

   ■    ■

 大崎事件は地裁で2回、高裁で1回の計3回、再審開始決定が出た。「これを取り消さなければ著しく正義に反する」とまで言い切った最高裁決定(小池裕裁判長)は正しかったのか。25年に及ぶ再審請求の歳月で積み上げられた証拠を基に検証する。



「大崎事件」再審取り消し=40年前の殺人、「事故死」認めず-最高裁(2019年6月26日配信『時事通信』)

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原口アヤ子さん

 鹿児島県大崎町で1979年に男性の遺体が見つかった「大崎事件」の第3次再審請求について、最高裁第1小法廷(小池裕裁判長)は25日付の決定で、殺人などの罪で懲役10年が確定、服役した義姉の原口アヤ子さん(92)の再審開始を認めた鹿児島地裁、福岡高裁宮崎支部決定を取り消し、原口さんの再審請求を棄却した。地、高裁段階で認められた裁判のやり直しを最高裁が取り消したのは初とみられる。

 小法廷は、転落事故による出血死の可能性を指摘した弁護側の法医学鑑定について、「無罪を言い渡すべき明らかな証拠には当たらない」と判断した。5裁判官全員一致の意見。懲役8年が確定、服役した原口さんの元夫(故人)の再審も取り消した。

 決定は弁護側鑑定について、腐敗が進んでいた遺体の解剖時の写真を根拠にしていると指摘。「解剖で収集された情報は極めて限定的。写真の色調から窒息死の所見がないと判断しているが、死因の認定に決定的な証明力を持つとは言えない」と結論付けた。

 高裁支部は、この鑑定結果から共犯者3人の「タオルで首を絞めた」との自白の信用性を否定したが、小法廷は「鑑定を過大評価して結論を導き出した。不合理と言わざるを得ない」と批判した。

 第3次請求で地裁は2017年6月、原口さんが共犯者に殺害を持ち掛ける場面を見たとする女性の供述を分析した心理鑑定に基づき、共犯者3人の自白の信用性を否定。高裁支部は18年3月、心理鑑定を「不合理」としつつ、法医学鑑定を根拠に再審を認め、検察側が特別抗告していた。

 原口さんは逮捕後、一貫して無罪を主張したが、確定判決は3人の自白と、窒息死と推定した当時の解剖医の鑑定結果などから有罪と認定した。

 原口さんの再審は第1次請求でも地裁で認められたが、高裁支部が取り消し、最高裁で確定。第2次請求は、地裁、高裁支部ともに退けている。



再審請求中、原口さんの誕生日祝う=開始決定から1年3カ月-大崎事件(2020年6月7日配信『時事通信』)

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「大崎事件」で再審請求中の原口アヤ子さん(左)の92歳の誕生日会。支援者らが集まった=7日午後、鹿児島県内の病院

 鹿児島県大崎町で1979年に男性=当時(42)=の遺体が見つかった「大崎事件」で、殺人罪などで服役し、再審請求中の原口アヤ子さんが15日で92歳になるのを前に、入院している病院で7日、誕生会が開かれた。弁護団や支援者らが集まり、誕生日を祝うとともに早期の再審開始に期待を寄せた。

 原口さんは捜査段階から一貫して無実を主張したが、鹿児島地裁が言い渡した懲役10年が確定し、服役。第3次再審請求に対し、福岡高裁宮崎支部が2018年3月、認める決定を出した。これに対し、福岡高検は最高裁に特別抗告している。




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