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同一労働同一賃金 政治の責任で実行せよ(2020年3月31日配信『中国新聞』-「社説」)

 「同一労働同一賃金」が4月スタートする。大企業と派遣会社に義務付け、中小企業は1年遅れになる。安倍晋三首相が2016年1月の施政方針演説で意欲を示し、法整備に着手して4年。政治の責任で実効性のあるものにしてもらいたい。

 同じ仕事なら同じ賃金を支払うべきだとの考え方によって、派遣・パートなどの非正規労働者と、正社員の間の著しい待遇格差を縮める社会政策である。時代の要請だといえよう。

 日本社会は今、「就職氷河期」の世代を巡る問題に直面している。この世代が非正規労働者と正社員の間の格差ゆえに働く意欲を失いがちで、非婚、少子化、ひきこもりといった現実をもたらしているからだ。

 非正規労働者の賃金の底上げにより、こうした問題の解決に近づかなければならない。

 もう一つ、非正規と正社員の間の待遇格差が、安倍政権も唱える「成長と分配の好循環」を阻む要因となるためだ。仮に成長を追ったとしても、個人消費が付いていかなければ長続きしない。労働力不足の解決のためにも、今後の日本経済には待遇格差の是正は欠かせない。

 同一労働同一賃金はこれまでも議論されてきたが、日本に定着しにくいとされてきた。欧米では職務を明確にして採用、処遇する「ジョブ型雇用」が一般的である。これに対し、日本型雇用は新卒一括採用後に配置換えを経て、社内で能力や経験を評価されて昇給する「メンバーシップ型」であるからだ。

 このため同一労働同一賃金の制度は日本の雇用慣行に合わせて、職務給を押しつけず、職能給、成果給、勤続給などの賃金形態でも不合理でなければ適法とした。これにより実際の運用は企業側の判断に左右される面が強くなったといえよう。

 とはいえ、「仏つくって魂入れず」にしてはならない。

 いかに非正規労働者の声を制度に反映させるかが、今後は重要になるだろう。労働組合による非正規の組織化を促すこと、労組がない場合は労使協議の場を設けることを求めたい。

 労使間のコミュニケーションが円滑であることがなお求められよう。連合などナショナルセンターの力量も問われる。

 非正規の待遇を改善するために正社員の基本給や賞与を減らすケースや、非正規にこれまでなかった賞与を支給するため毎月の給与は減らすなどのケースも懸念されよう。「成長と分配の好循環」の趣旨に照らすまでもなく賃金引き下げによる同一労働同一賃金はあり得ない。

 2018年度の企業の内部留保は7年連続で過去最大を更新し、約463兆円にも膨らんでいる。内部留保への課税などは議論が分かれるところだが、政治の責任で賃金に振り向ける流れをつくってもらいたい。

 また、新型コロナウイルスの感染拡大で景気の先行きに不安を覚えた企業が、待遇是正を先送りすることがあるとすれば由々しきことに違いない。雇い止めなどが増える恐れも指摘されており、2008年のリーマン・ショック後の「派遣切り」の再来を招いてはならない。

 雇用形態による不合理な待遇差別を禁じ、非正規という言葉をこの国から一掃することは、首相の国民に対する約束だ。着実に実行してもらいたい。




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Author:gogotamu2019
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