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元看護助手再審無罪(2020年4月2日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆証拠開示の法制化を急げ◆

 滋賀県東近江市の病院で2003年、男性患者の人工呼吸器を外し殺害したとして殺人罪で懲役12年が確定、服役した元看護助手西山美香さんの再審判決で、大津地裁は無罪を言い渡した。確定判決の根拠となった捜査段階の自白について任意性や信用性を否定した。

 西山さんは服役中の10年9月に第1次再審請求をしたが再審は認められず、12年9月になって第2次請求を申し立てた。刑期を終えて出所した4カ月後の17年12月、大阪高裁が再審開始を決定。昨年3月に最高裁が検察側の特別抗告を棄却し、ようやく確定した。第1次請求から判決まで10年近くを費やした。

 「無罪を言い渡す明らかな証拠」を新たに発見した場合に再審を開始すると刑事訴訟法は定めるが、証拠のほとんどは検察側の手の内にある。中には、有罪立証に不都合で提出されなかった証拠もある。しかし、再審請求をする側が証拠一覧の開示を請求できる仕組みはない。

 このため証拠開示を巡り弁護人と検察官が激しく対立。再審開始か否かの結論が出るまでかなりの時間がかかる。政府は証拠開示の在り方を含め「無辜(むこ)の救済」を目的とする再審ルールの整備を急ぐ必要がある。

 西山さんは滋賀県警の取り調べで「故意に呼吸器のチューブを外し、男性を殺害した」と自白した。他方、西山さんが県警による任意聴取の段階で呼吸器を故意に外していないと述べた自供書や、呼吸器のチューブ内のたん詰まりが原因で死亡した可能性があるとの医師の所見を記した捜査報告書もあった。

 しかし元の裁判で、自供書や捜査報告書は証拠提出されなかった。この二つの存在が明らかになったのは再審開始が決まり、再審公判に向け裁判所や弁護団、検察が協議を重ねていた昨年11月のことだ。県警が大津地検に渡していなかった。

 再審請求審の証拠開示で弁護人は裁判所の訴訟指揮に頼るほかない。担当する裁判官の姿勢次第で開示に格差が生じるという。また裁判官が開示を勧告したり命令したりしても、検察側が応じる義務はない。

 熊本県で1985(昭和60)年に起きた松橋事件で、服役を終え再審請求した男性は捜査段階で「凶器の小刀にシャツから切り取った布を巻き付け、被害者を刺殺後、燃やした」と自白。ところが97年、弁護団が熊本地検で保管中の証拠の中から燃やしたはずの布きれを見つけ、再審無罪につながった。

 布川事件や東京電力女性社員殺害事件でも、検察側が重要な証拠を開示せず「証拠隠し」と批判された。再審の行方に大きな影響を与える証拠開示の法制化は急務だ。




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