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滋賀患者死亡 冤罪生む捜査を絶たねば(2020年4月2日配信『新潟日報』-「社説」)

 自白を誘導し、都合の悪い証拠は出さない。冤罪(えんざい)を引き起こした不当な捜査手法が厳しく問われた。警察と検察は猛省し、捜査の在り方を徹底検証しなければならない。

 滋賀県の病院で2003年、男性患者の人工呼吸器を外し殺害したとして殺人罪で懲役12年が確定し、服役した元看護助手西山美香さんの再審公判で判決が言い渡された。

 大津地裁は「何者かに殺されたという事件性を認める証拠はない」と無罪とした。

 西山さんは04年、県警の聴取に「呼吸器のチューブを外し患者を殺害した」とうその自白をしたことで逮捕、起訴された。

 ところが、再審に至る経過の中で、県警の自白の誘導や証拠隠しなどが相次いで発覚した。

 裁判長は判決理由で「取り調べでうそをついたから有罪となったと思っているかもしれないが、西山さんのせいではない。問われるのは捜査手続きの在り方」と述べた。全ての捜査関係者が真摯(しんし)に耳を傾けるべきだ。

 地裁は、患者の死因について致死性の不整脈などによる自然死の可能性が高いとした。

 供述については、呼吸器のアラームが鳴り続けていたかどうかという主要な点が目まぐるしく変わっているとし、自白の信用性や任意性を否定した。

 さらに、軽い知的障害がある西山さんの特性や恋愛感情を利用し「強い影響力を独占して供述をコントロールしていた」と捜査を批判した。

 殺害を当初否認していた西山さんが担当刑事に好意を持ち、刑事が利用して殺害したという虚偽の供述を誘導したことが判明している。

 県警は約120点もの証拠を地検に送致せず、その中には、自然死を示唆する医師の解剖所見記録もあった。

 人権をないがしろにし、証拠も公平に扱わない当局の捜査手法にあぜんとする。

 一方、無罪判決は西山さんの置かれた状況を丁寧に酌み上げている。

 注目すべきは、西山さんのように知的障害があり、相手に迎合しやすい「供述弱者」は虚偽供述を誘発する恐れが高いと地裁が指摘したことだ。冤罪を生む危険性に強く警鐘を鳴らしたものといえる。

 冤罪を巡っては、10年に虚偽の自白で被告の無期懲役が確定した足利事件が再審無罪となった。同じ年に、大阪地検特捜部の証拠改ざん事件も発覚した。

 これらを教訓に自白偏重の捜査方法が見直され、取り調べの録音・録画などが始まった。

 一定の改善は進んだといえるが、「供述弱者」に関しては、取り調べに弁護人らの立ち会いを認めるべきだとの意見が出ている。速やかに検討すべきだ。

 供述弱者は知的障害者に限らない。取り調べで孤立し、担当の刑事しか頼れない状況に追い込まれれば、虚偽供述する可能性は高くなる。

 冤罪につながった今回の捜査の問題点をしっかり洗い出さなければならない。




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Author:gogotamu2019
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