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滋賀再審無罪/冤罪防止へ抜本的改革を(2020年4月3日配信『神戸新聞』-「社説」)

 滋賀県東近江市の病院で2003年、男性患者の人工呼吸器を外して殺害したとして殺人罪で懲役12年が確定、服役した元看護助手西山美香さん(40)に対する再審で、大津地裁が無罪を言い渡した。大津地検は上訴権を放棄し、判決は確定した。

 西山さんは捜査段階では「呼吸器を外した」と自白したが、公判では否認した。ようやく冤罪(えんざい)が認められることになるが、20代から30代にかけて刑務所で過ごした月日は帰ってこない。警察と検察は、捜査と公判の誤りを率直に認めるべきだ。

 判決は、西山さんの自白を「重要な点の供述が変遷していた」とし、信用性や任意性を否定した。

 この取り調べは、机を蹴られるなどの「怖さ」と親身になってくれる「優しさ」を使い分けたものだったという。西山さんの恋愛感情をも利用していたと判決は指摘した。卑劣ともいえる自白誘導の手法は、厳しく批判されなければならない。

 患者の死因について、判決は不整脈などによる自然死の可能性が高いと結論づけた。他殺を否定する医師の所見が記された捜査報告書も存在していたが、これは再審段階まで開示されなかった。

 検察側は再審開始を認めた大阪高裁の決定後、なおも特別抗告をして争った。他殺を疑う証拠を軽視し、捜査と公判を長引かせて人権を侵害した事実は、重く受け止めてもらいたい。

 今後、最も必要なことは同様の被害を繰り返さないことだ。

 昨年6月に改正刑事訴訟法が施行され、取り調べの可視化が義務付けられた。裁判員裁判事件や検察による独自捜査事件の取り調べでは、録音・録画が残される。密室での自白の強要や誘導などを防ぐことなどが期待されている。

 ただ、可視化が義務付けられるのは事件全体のごく一部にすぎない。また、その映像が有罪立証に有利に扱われる恐れがあるほか、任意段階での聴取は対象外である。このような理由から、冤罪を防ぐには十分ではないとの指摘もある。

 今回の再審で、検察はそれまでの有罪主張の方針から一転、立証を断念したが、その理由を明示しなかった。検察は容疑者を不起訴にする場合も、処分理由を明らかにしないケースが目立つ。まず、こうした不透明な体質を改善することが刑事司法を変える一歩になるはずだ。

 大阪の女児死亡火災や熊本の松橋(まつばせ)事件など近年も再審無罪が続いており、見過ごせない人権問題となっている。取り調べの可視化にとどまらず、弁護人の取り調べ立ち会いを認めるなど、抜本的な刑事司法改革を進めることが急務である。




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