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西山さん再審無罪 冤罪根絶へ事件の検証を(2020年4月3日配信『琉球新報』-「社説」)

 滋賀県の病院患者死亡を巡り殺人罪で服役した元看護助手西山美香さんの裁判をやり直す再審で、大津地裁は無罪判決を言い渡した。大津地検は上訴権を放棄し、西山さんの無罪が確定した。2004年7月の逮捕から16年近くたって、無実の罪で12年もの刑に服した西山さんが、ついに冤罪(えんざい)を晴らした。

 事件を作り上げ西山さんの自由を奪った警察、検察の人権侵害は断じて許されない。それをチェックできなかった裁判所も含めて、司法の責任は極めて重い。冤罪根絶に向けた刑事司法改革を強力に進めなければならない。

 最初の裁判で大津地裁は、警察が取り調べ段階で作成した自白調書の信用性を認め、懲役12年の実刑を言い渡した。判決は07年に最高裁で確定した。

 だが、再審判決は「何者かに殺されたという事件性を認める証拠はない」と断定し、男性患者の死因は自然死だった可能性が高いとした。滋賀県警の取り調べに対しては、軽度の知的障がいがある西山さんの特性や恋愛感情を利用し、虚偽の自白を誘導したと指摘した。

 再審開始が決まった後になって開示された証拠の中に、「患者の死因はたん詰まりの可能性がある」と自然死を示唆する医師の報告書があった。この証拠を滋賀県警は地検に送致していなかった。都合の悪い証拠を隠し、殺人罪をでっち上げていたのだ。
 再審判決を言い渡した大西直樹裁判長は「手続きの一つでも適切に行われていたら、このような経過をたどることはなかった」と警察の証拠隠しを批判した。その上で、西山さんに「問われるべきはうそ(刑事に誘導された自白)ではなく、捜査手続きの在り方だ」と語り掛けた。

 19年6月に、取り調べ過程の録音・録画を義務付ける改正刑事訴訟法が施行された。冤罪防止のための捜査の可視化が前進したが、裁判員裁判事件や検察の独自捜査事件に対象が限定されている。

 障がいなどが原因で自分を守る反論がしづらく、誘導されやすい「供述弱者」を冤罪被害から守る仕組みについても検討が求められる。

 捜査段階の証拠隠しがあったとはいえ、西山さんの無罪の訴えに耳を傾けず、捜査側の見立てを追認した裁判所の責任は重大だ。自白偏重の捜査手法や供述調書に過度に依存した「調書裁判」が、冤罪の温床といわれている。

 再審判決は2月の初公判から2カ月でのスピード審理となった。西山さんの早期の名誉回復を優先したことは評価されるが、不当な捜査を招いた真相を、裁判を通して明らかにするには至らなかった。

 日弁連などを含めた公平な立場の第三者委員会を設置し問題点を詳細に検証、公表する必要がある。冤罪被害者を生み出さないためには、人権蹂躙(じゅうりん)の教訓を社会全体で共有することが欠かせない。



声なき声を聞く(2020年4月3日配信『琉球新報』-「金口木舌」)


 殺人罪で懲役12年が確定し服役した元看護助手の西山美香さんの再審公判で、大津地裁が無罪判決を言い渡した。滋賀県の湖東記念病院で2003年、男性患者の人工呼吸器を外して殺害したとされていた

▼大西直樹裁判長は患者の死因は自然死の可能性が高いとした。「(担当刑事が)強い影響力を独占して供述をコントロールしていた」として、軽度の知的障がいがある西山さんの特性や恋愛感情を利用したと指摘した

▼取り調べで障がいなどにより反論がしづらく、誘導されやすい「供述弱者」は冤罪(えんざい)被害のリスクが高いという。専門家は弁護士の立ち会いなど、防止する仕組みの必要性を訴える。西山さんは「私を教訓に裁判所も変わらなければならない」と語った

▼8日まで「発達障害啓発週間」。知的障がい、発達障がいを含めさまざまな障がいへの理解が広がれば、誰もが人権を守られる優しい社会につながる

▼14年施行の「県障害のある人もない人も共に暮らしやすい社会づくり条例(共生社会条例)」は、差別禁止を明記した。全県民があらゆる分野に参加できる共生社会を目指す

▼条例策定に向けた活動を主導し09年に道半ばで亡くなった新門登さんは「声なき声を聞く」ことの大切さを訴えた。声を上げられない弱者が取り残されていないか。私たちの社会に変えていかなければならない点は多い。





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Author:gogotamu2019
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