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カニの絵(2020年4月3日配信『高知新聞』-「小社会」)

 子どもが描いた海辺の絵を見て宮城まり子さんはショックを受けた。画用紙の中央にいる元気なカニに大きな×印がついている。印を入れたのは描いた本人で、その子は絵を捨てようとしていた…。

 女優で歌手の宮城さんが、からだが不自由な子どもたちの養護施設「ねむの木学園」を静岡に設けたのは1968年。半世紀以上子どもたちから「おかあさん」と慕われ続け、先月21日、93歳で亡くなった。

 障害児の学びの場をいち早く開いた情熱は、芸術の分野でも子どもの個性を自由に伸ばした。障害のあるなしにかかわらず、それぞれが持つ力を理解し合って生きる。現在の共生社会の考え方を宮城さんは実践してきた。

 冒頭のエピソードに戻ると、学園を開いた当初は地域の教員が子どもを指導していた。自作に×印を入れた子どものカニの絵には、脚と波が教員によって描き加えられていた。

 カニを知らない子どもが想像した絵なのに―。こんな経験から、大人が口を出さない美術活動を70年代半ばに始めた。作品集を見ると、葉っぱや花、動物、家…。さまざまな題材が細かくカラフルに描かれた労作ばかりだ。

 宮城さんは、作品集や自著で紹介できない子どもたちを気にしていた。〈寝たきりで、ただ、食べるだけでも、その子がいるから、その存在が大きいことを私は知っている〉(「まり子の目・子どもの目」)。寄り添い続けた子どもへの思いが伝わる。




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