FC2ブログ

記事一覧

元看護助手無罪 供述弱者守る仕組みを(2020年4月3日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 入院患者の人工呼吸器を外し殺害したとして殺人罪で12年の懲役が確定、服役した滋賀県の元看護助手西山美香さん(40)の再審公判で無罪判決が言い渡された。逮捕、起訴から2度の再審請求を経て、2日に無罪が確定するまで実に約15年半。冤罪(えんざい)がもたらした犠牲の大きさを、司法に携わる者全てが改めて認識する必要がある。

 患者死亡について、大津地裁の無罪判決は自然死の可能性が高いと指摘した。複数の専門家の意見書を含む証拠に基づく結論である。その上で「患者が何者かに殺害されたという事件性すら証明されていない」と断じた。

 自然死の可能性が高い事案にもかかわらず、なぜ滋賀県警、大津地検という捜査機関が動き、1人の人間の懲役が確定してしまったのか。司法関係者はその原因や経緯を精査し、冤罪被害者を二度と出さないようにしなければならない。

 西山さんが、軽度の知的障害がある「供述弱者」であることにも判決は言及した。供述弱者は、障害などにより自分を守るための反論をできないことがあり、取り調べで誘導されやすい傾向がある。

 このため、供述弱者は冤罪被害の危険性が高いとされる。本来はこうした傾向を把握して、慎重な取り調べを行わなければならない。

 しかし、取り調べた警察官は、警察官本人への西山さんの恋愛感情を利用するなどしてコントロールし、長時間の取り調べを行って虚偽の自白を誘導した可能性が高い、と判決は指摘した。密室の取り調べで優位にある警察官が、供述弱者に配慮するどころか、その傾向を巧みに利用していたのである。

 西山さんのような被害者を今後出さないため、この事件を教訓にして、どのような対策を講じるべきなのか。供述弱者の問題に詳しい弁護士らは、障害が疑われる人の取り調べに際して専門家や弁護士が立ち会い、冤罪を防止する仕組みをつくることが必要だと訴える。

 障害の有無については、捜査段階で明らかにならず、起訴後の鑑定などで判明する場合もある。それだけに、取り調べ段階から専門家などが立ち会うことが不可欠だ。

 今回の冤罪事件では、県警の「証拠隠し」ともみられる事実も判明している。故意に呼吸器を外していないと述べた西山さんの任意聴取段階の書類や、たん詰まりで死亡した可能性があるとした医師の所見を記した捜査報告書を、県警は地検に渡していなかった。弁護側がその存在を知ったのは、逮捕から15年余りもたってからのことだ。

 海外では、真実究明を目的とした再審請求調査部門を検察庁に置いたり、独立した調査委員会が誤った判決の原因を調べたりする事例もある。冤罪をなくすために、こうした制度の整備を急ぐべきだ。




スポンサーサイト



プロフィール

gogotamu2019

Author:gogotamu2019
障害福祉・政治・平和問題の最新ニュース・論説紹介

最新記事

カテゴリ