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放送と特措法/政治介入に歯止めが要る(2020年4月4日配信『神戸新聞』-「社説」)

 テレビやラジオなどの放送には、国民の「知る権利」に応える役割がある。放送法がうたう「自主・自律」の精神と、番組制作の自由を、どんな場合も守らねばならない。

 民放はもちろん、公共放送であるNHKも同様だ。

 ところが、新型コロナウイルス対策を理由に改正された特別措置法では、非常時に首相から指示を受ける「公共機関」にNHKが指定されている。政府と連携して情報を届けるのは重要な責務だが、放送内容に政治が介入する余地を残す規定だ。

 政権の判断で民放も追加指定できる。放送全体が政府に都合の良い情報の伝達を強いられれば、本当に大事な事実が伝わらない恐れがある。

 国民の命と健康を守る非常事態でも、恣意(しい)的運用を許さない歯止めは不可欠だ。「放送の内容には介入しない」と条文に明記し、民放は指定対象から除外すべきだろう。

 ところが宮下一郎内閣府副大臣は放送介入の可能性に言及した。

 「(公共機関に)指定された場合は、『この情報を流してもらわないと困る』として民放に指示を出すことや、放送内容の変更や差し替えをしてもらうことはあり得る」と国会で答弁した。耳を疑う発言だ。

 野党に批判され、「放送局には放送の自由がある。要請や指示を行うものではない」として民放に関する発言を撤回した。特措法担当の西村康稔経済再生担当相も「今後も考えていない」と火消しを図った。

 宮下氏は「放送法との整合性を整理しきれないまま、誤解に基づいて発言した」と釈明している。だとすれば、報道の自由に関する認識に欠け、内閣の一員としても、政治家としても、お粗末というしかない。

 ただ、NHKを対象とする特措法の規定は変わらない。首相の指示などが放送法の定める番組制作の自由を損なう恐れは残る。

 新型コロナ対策で特措法に基づく緊急事態宣言が出された際のNHKへの対応について、安倍晋三首相は「報道内容は総合調整や指示の対象にはならない」と述べた。

 だが政府の答弁や法解釈はたびたび変更されてきた。やはり条文に盛り込む作業が欠かせない。政府、与党はさらなる法改正などを野党と協議しなければならない。

 一方、NHKにも独立性を保つ姿勢が求められる。

 かんぽ生命保険の不正販売報道を巡り、経営委員会が日本郵政グループの抗議を受け当時の会長に厳重注意した。放送法を自ら逸脱した行為への猛省が必要だ。上層部が外部の圧力に応じて現場に介入するようでは公平性や独立性への信頼を失う。改めて肝に銘じてもらいたい。




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