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滋賀の再審無罪 冤罪生まぬ仕組み急げ(2020年4月4日配信『徳島新聞』-「社説」)

 警察に不都合な証拠が隠され、刑事の自白誘導で、殺人事件に仕立てられたのは言語道断だ。警察と検察、裁判所は捜査と公判を徹底的に検証し、冤罪(えんざい)を生まない仕組みの整備を急がねばならない。

 2003年に滋賀県内の病院で患者の人工呼吸器を外し殺害したとして、懲役12年が確定、服役した元看護助手西山美香さん(40)の再審公判で大津地裁は無罪判決を言い渡した。大津地検は控訴せず、西山さんの無罪が確定した。

 逮捕から15年半。西山さんの「名誉回復」はされたが、無実の女性が自由を出所まで13年間奪われた。人権侵害は甚だしい。

 裁判長は、患者の死因を自然死の可能性が高いと判断。「そもそも患者が何者かに殺害されたという事件性すら証明されていない」と指摘した。

 許せないのは、自然死の可能性を指摘する医師の捜査報告書や、西山さんが呼吸器を故意に外していないと逮捕前に述べた自供書が隠されていたことだ。

 被告に有利なこれらの証拠が県警から地検に送られたのは、昨年の再審開始確定後というからあきれる。地検がこれらを早く入手していれば、西山さんの起訴はなかったのではないか。

 地検は報告書などの存在が判明した後、方針を変えて、有罪立証を断念した。その理由を明らかにしていないが、本来なら起訴した誤りを誠実に認めて無罪を求めるべきだった。

 判決は、任意聴取で殺害を認めた西山さんの自白について信用性を否定。刑事が軽度の知的障害がある西山さんの迎合的な特性や恋愛感情を利用し「強い影響力を独占して供述をコントロールしていた」と指摘した。捜査は卑劣と言わざるを得ず、猛省を促したい。

 自分を守る反論がしづらく、誘導されやすい「供述弱者」は冤罪被害のリスクが高いとされる。被害を防ぐにはどうしたらいいか。

 これまでも指摘してきたように、取り調べの録音・録画(可視化)や弁護人の立ち会いが有効だろう。

 一部の事件で録音・録画は義務化され、検察は対象外の事件でも運用しているが、警察は慎重なようだ。また逮捕前の任意の取り調べは対象外だ。義務化の対象を拡大する必要がある。

 弁護人が立ち会い、必要な介入ができるようになれば、無理な取り調べや過度の誘導も防げるはずだ。

 ずさんな捜査を見抜けず無実の訴えを、再審請求を含め7度も認めなかった裁判所の責任も大きい。判決後、記者会見した西山さんは「私を教訓に裁判所も変わらなければならない」と訴えた。その声を重く受け止めるべきである。




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