FC2ブログ

記事一覧

70歳就業法 安心して働ける環境に(2020年4月9日配信『中国新聞』-「社説」)

 希望する人が70歳まで働けるよう、企業に就業機会を確保する努力義務を課すことを柱とした関連法が今国会で成立した。来年4月からスタートする。

 少子高齢化が進む中、働き手不足を解消し、社会保障制度の担い手を増やす「一挙両得」を政府は目指しているようだ。

 元気で意欲のある人に働いて保険料などを負担してもらえば、社会保障を支える裾野は広がるだろう。しかし健康状態や仕事への意欲は人それぞれで異なる。老後資金や年金の目減りを不安視しながら、働かざるを得ない人もいるはずだ。

 決して押しつけにならず、高齢者がそれぞれの事情に応じて、自由に働ける環境づくりが欠かせない。

 今回の関連法では、定年延長や継続雇用制度の導入など、65歳までに適用している今の選択肢に、フリーランスや起業を希望する人への業務委託と、自社が関わる社会貢献事業に従事させることを加えた。

 継続雇用すれば、他社に転職することも認める。企業は、いずれかの方法で希望者を就業させるよう努めることになる。

 多様な働き方の選択肢が増えたように映る。しかし高齢者を使い勝手のよい安上がりの労働力として扱うのが実情ではないか。そんな疑念が拭えない。

 というのも、例えば業務委託となれば、雇用関係がなくなり労働者を保護する法律から外れてしまうからだ。

 最低賃金が適用されなかったり企業の都合で仕事がなくなっても賃金や報酬も保証されなかったり…。一部を除いて労災保険に入れない。これでは安心して働けまい。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、収入が激減したフリーランスの不安定な労働実態が明らかになった。政府は、高齢者を含めて働く人が不利益を被ることがないようチェックを強めなければならない。

 また働く高齢者が増える中で、労災の発生率が上昇していることも見逃せない。厚生労働省によると、2018年に労災に遭った高齢者は約3万3千人に上った。10年前より4割増え、全体の4分の1を占めた。身体機能の衰えなどから、転倒や腰痛が目立っているという。

 収入はもちろん安全な労働環境の確保など、不安定な環境で働く高齢労働者が増えないよう、労使で契約の内容をしっかり詰めておく必要がある。

 「同一労働同一賃金制度」が4月からまず大企業に導入された。ところが中小を含め、多くの企業は60歳定年制を採用している。再雇用をする場合は、賃金を大幅に抑えるケースが目立っている。

 高齢者の処遇改善は欠かせないが、その一方で若年層の採用や給与に影響を及ぼすことは避けなければならない。企業には労働に見合った賃金体系や評価の仕組みづくりが求められる。

 政府は、今後労使で合意するべき内容などを省令で定め、指針をまとめる。

 高齢者や企業が70歳まで働くことのリスクや不安を解消できるよう指針で示し、財政面での支援も打ち出すべきだ。

 政府は、将来的に70歳までの就業機会の確保を義務化する方針だという。新たな制度の検証に加え、高齢労働者の保護に万全を期す必要がある。




スポンサーサイト



プロフィール

gogotamu2019

Author:gogotamu2019
障害福祉・政治・平和問題の最新ニュース・論説紹介

最新記事

カテゴリ