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成年後見制度20年

成年後見制度20年 柔軟な運用心掛けたい(2020年4月27日配信『茨城新聞』-「論説」)

認知症や障害により判断能力が衰えた人を支える成年後見制度が導入され、20年が過ぎた。しかし高齢化社会に欠かせないといわれながら、制度の利用は伸びない。高齢者のだいたい4人に1人が認知症か予備軍とされ、厚生労働省の推計では現在、認知症の人は602万〜631万人に上るが、制度利用者数は22万人程度にとどまる。

親族や弁護士、司法書士、社会福祉士らの中から家庭裁判所に選任された後見人が本人に代わり、契約や預貯金などの財産管理を行う。親族による着服が相次いだこともあり、弁護士ら専門職が増えているが、親族側から「仕事のわりに報酬が高すぎる」といった不満の声が後を絶たない。

また後見人の業務が財産管理中心となり、本人の意思尊重や生活支援など福祉的な視点に乏しいとの指摘もあり、制度利用のネックになっているとみられる。利用促進に向け厚労省の有識者会議は3月の中間報告で、本人の意思を丁寧にくみ取り、生活を守ることに重点を置いた制度運用に改善していく必要があるとした。

本人が何を望んでいるかに気を配り、医療や介護など適切なケアを受けられるようにできるかが鍵になる。例えば、状況により後見人を専門職から親族に替えたり、生活支援は親族、財産管理は専門職と役割分担したりするなど柔軟な運用を心掛ける必要があろう。

成年後見人は親族以外の専門職などが7割を占める。被後見人である利用者の財産額に応じて報酬が決まり、月2万〜6万円。財産の中から支払われる。だが全国の知的障害者施設を対象にした厚労省研究班の2017年度調査で、後見人が本人に面会に来る頻度は「ほぼ来ない」「年1〜2回」が弁護士で77%、司法書士で43%だった。

面会にかけた時間は弁護士、司法書士とも10分以内が25%で最も多かった。財産管理と並ぶ後見人の重要な仕事で、本人の希望や健康状態に配慮し、必要な医療や介護を受けられるようにする「身上監護」をきちんとこなせるとは思えない。

00年4月の制度導入以来、使い勝手が悪く、財産が目減りするだけという批判は根強い。最高裁は、介護や福祉サービスの契約などニーズが高まっている生活支援の実績に応じて後見人の報酬を増減させたり、交代を柔軟に認めたりする考えを示している。利用者側の納得が得られる仕組みづくりが求められよう。

制度を定着させていくには、自治体の役割も大きい。政府は17年に定めた成年後見の利用促進計画で、21年度までに当事者の相談に乗ったり、家裁に候補者を推薦したりする「中核機関」を設置するよう全国の市区町村に求めた。だが昨年7月時点で設置済みは8%にとどまり、67・9%が設置時期未定とした。

中核機関の設置を急がなければならない。このままだと、制度変更がスムーズにいかない恐れもある。また家裁や専門職、医療・福祉関係団体、民間団体などが協力し支援が必要な人を発見する地域連携ネットワークにも影響が出るだろう。

団塊の世代が75歳以上になる25年に、認知症の人が最大で730万人に達すると厚労省は推計している。そう遠くない将来に待ち受けている超高齢社会を見据え、できるだけ早い時期に万全の備えを固めておきたい。



成年後見20年 利用者目線で使いやすく(2020年4月27日配信『山陽新聞』-「社説」)

 認知症や知的障害などで判断能力が不十分な人を支援する成年後見制度について、厚生労働省の有識者会議が先月、運用の改善を求める報告書をまとめた。

 弁護士や司法書士、福祉関係者、親族らが本人に代わり、預貯金の管理や福祉の利用手続きを行い、生活の見守りも担う制度である。本人や家族らが申し立て、家庭裁判所が後見人を選任する。

 2000年に始まり、今月で20年になった。だが、利用者は昨年末で22万4千人で、認知症の人が600万人に上ると推計されるのと比べても、低調と言わざるを得ない。利用者目線で使いやすくする必要があることは確かだ。

 政府は17年3月、制度の利用促進に向けて21年度までに実施する基本計画を決定し、中間年の19年度に検証することになっていた。

 有識者会議が報告書で求めたことの一つは、利用者の意思の尊重である。当然のことと思えるが、財産保全のみが重視され、本人の意思尊重や生活支援など福祉的な視点に乏しいとの指摘があった。ガイドラインを作って普及させるとともに、後見人らを対象とした研修を実施するべきだと強調した。

 利用者からの相談を受け、家庭裁判所や後見人らとの調整役を担う「中核機関」の早期整備も求めた。厚労省は21年度までに中核機関か、それに準じる「権利擁護センター」を全市区町村に設置することを目指しているものの、同センターを含めて昨年10月時点で3割余の自治体にとどまっている。

 岡山県内では、総社市が昨年4月、中核機関を開設し、玉野市も先月、設置を目指した審議会の初会合を開くなどの動きが出ている。広島県内では、福山市が今月、初めて設置した。国や都道府県が主導して広げてもらいたい。

 この報告とは別に、最高裁は後見人業務を、財産の調査や収支の確認、利用者の状況把握など必ず行う事務と、不動産の売却や遺産分割協議といった必要に応じて担う事務に分け、実施状況で報酬を増減させる考えをまとめた。昨年3月に打ち出し検討していたもので、今後は各家裁で具体的に協議するという。

 見守りといった日々の生活支援をした後見人の報酬を手厚くする方向で、生活支援を重視すること自体は理解できる。ただ、支援内容が正しく反映されるのかどうか疑問の声も関係者にある。

 意識の乏しい後見人が財産の目減りを防ぐために住宅のバリアフリー改修を拒んだり、本人が自宅での生活を望んでいるのに、生活能力を見極めずに施設に入所させたりすることもあるとされる。

 大切なのは、本人の意思を丁寧にくみ取ることだ。認知症が進んでも、重度の障害があっても、意思は存在する。国は意思決定支援の具体策を示し、ガイドラインなどで制度に組み込む必要がある。





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